美術科 テキスタイルコースDepartment of Fine Arts Textile

[優秀賞]
荒井美帆|雪月花
茨城県出身
飛田正浩ゼミ
H1630×W1360×D30mm シルクスクリーン?絹?反応染料

私が描く「線」には「惨めな自分を受け入れ、力強く生きる理想の自分になりたい」という気持ちが込められている。着物にも様々な紋様があり、魔除けや繁栄など、人の「気持ち」が込められてきた。 本作では、自分と着物との「思い」をリンクさせ「理想の自分」を表現した。 四季の美しさを意味する「雪月花」の言葉に思いを重ね、惨めな点や線を「美しい作品」へ生まれ変わらせることで「理想の自分」を表現した。


飛田正浩 教授 評
荒井さんはシルクスクリーンの技法にオリジナルの技法を組み合わせて奥深い風景を表現しました。彼女は細密かつ繊細な絵を得意としていましたがこの卒業制作でその集大成を作ったといえるでしょう。
とはいえ、かつてはテキスタイルデザインにおける点、線、面の役割分担にバランスを欠くこともありましたが、今回の卒業制作では驚くほどに重ねた点がいよいよ線や面になり、点、線、面と一言では言い表せないほどの複雑なレイヤーを彼女オリジナルで表現しました。
離れて見ればバランスの良いコンポジションで見るものの視点を楽しく誘導し、近づいて見るとそれら全てが複雑な色の重なりであることに驚かされるでしょう。雪や花や月などややもすると凡庸になりがちなモチーフも、彼女なりのデザインでその新しさが和装を現代的な解釈で見せています。「雪月花」と題した本作は静かで優しく深い、山形人特有の感受性だと思います。茨城出身の彼女が山形愛に染まった証です。僕も彼女と一緒に大学からの遠くの風景を何度も眺めました。