笠原玲衣|未来の文化財予測?大江町の文化的景観に馴染む歴史的要素?
山形県出身
志村直愛ゼミ
国の重要文化的景観に選定されている町である大江町左沢地区では、文化的景観を維持、保存することを目的に、新しい建築物を建てる際や、改装や改修を行う際に、文化的景観に沿ったファサードを継承する建築物の計画に対し補助金を支給する取り組みを検討している。また、現在築年数が浅いと判断される建築物も、数十年後に文化財になるかもしれない。そうした発想から今、町並みを構成しているすべての時代の建築の特徴を明確にし、評価することで持ち主にその意義を知ってもらい、今のうちから大切に守っていくことができると考える。本研究では文化的景観に馴染む歴史的な要素を研究すると共に、時代による建築物の変化や特徴を分類し、将来文化財になり得る建築物を予測し、大切に保存していくことを目的とする。
研究方法は、1つ1つの建築物をデータベース化し、整理、分析する。その特徴から歴史的要素を抽出し、助成の根拠となる基準を試行する。また、アンケートによる調査を行い、その結果から竣工年などの建築物に関する情報がわかることが期待できることから、時代別の分類が可能になる。昭和戦後にできた建築物の外観意匠についても特徴を分析し、将来文化財となり得るデザインの要素を抽出、掲示する。
文化財の予測では、将来、戦後である昭和20年以降の建築物が文化財になっていくことが予想される。現在、昭和48年以前に建てられた建築物は築50年を経過していることから登録文化財への登録資格を持つ。今後、それ以降に竣工した建築物も順次文化財候補になっていくことになるため、それらの建築物を今あるうちに再評価しておくことが重要であると考える。
すでに定められている景観形成基準に加え、データベースから分析した歴史的要素を取り入れた建物が、今後、大江町左沢地区で新しい建物を建てる際や改装をする際に、補助金を支給する対象になるのではないかと考える。また、年代別の建築物の分類と分析から、時代別の特徴を解明することで、その特徴が将来文化財になり得る建築物の特徴になると考える。将来文化財になり得る建築物を先に予想することで、住民の建物に対する関心、愛着を高めていき、官民一体となって文化的景観を守っていくことを目指したい。